NPO法人
空き家活用プロジェクト
代表理事 清水 貴仁
- プロフィール
- NPO法人空き家活用プロジェクト代表理事。不動産産会社に勤める傍ら、空き家に関するアドバイザーとして空き家に悩む所有者へのアドバイス・支援を行っている。空き家についての実態調査、セミナーや講演会を通じて得た空き家の実態や有効活用手法の啓蒙活動に尽力している。
空き家を放置することは、
将来にわたって良いことがありません
少子高齢化や核家族化に伴って、居住者が介護施設に入居したり、所有者が亡くなり相続人が居住しなかったりすることで、空き家となる事例が増えています。また、思い出を大切にしたいという想いから「売却しないで何とかできないか」と考えているうちに長い間放置されてしまうこともあります。こうした日本における生活の変化や特有の思考が、空き家を生み出す要因になっていますね。
解決に重要なことは三つあります。一つ目は、空き家問題は民間だけではなく、行政や商店街などの地域が一体となって取り組んでいくことです。空き家所有者一人に解決を迫るのではなく、「空き家を地域に役立つものにするにはどうするか」を一緒に考えていくことが大切です。
二つ目は、空き家問題の解消に要する費用です。費用は空き家所有者を悩ませる大きな要因になっています。
古屋解体に要する費用の助成金がある行政は多いですが、空き家を活用していく費用に関する助成金は少ないのが現状です。空き家問題の解消には活用費用の支援が欠かせないですね。
三つ目は、家族としての考えと準備です。相続という大げさな話ではなく、帰省したときに「この家、将来どうするの?」と家族でコミュニケーションを取っておくことがとても大事です。空き家所有者の多くは『売却するのか、活用するのか』を決めるだけでも悩まれます。方向性だけでも決めておくことで、空き家リスクは大きく低減しますね。
空き家問題の解決を所有者だけに負わせても解決に向かうことは少ないと考えています。
漠然と「空き家をどうしよう?」と悩んでいる人が行政などの相談窓口へ行ったとしても、取り壊しや相続、税金対策といった明確な相談事でない場合には、行政側としても対応に困ってしまうという問題が生じていました。
そんな方向性が決まっていない空き家所有者が、まず相談できる先として私たちは活動しています。事情や思いを伺い、その家やご家族、地域にとって最も適した解決方法を一緒に考え、見出していくようにしています。また、解決に向けて必要な専門家や工事会社などを紹介したり、空き家を活用したい企業や個人の方々とマッチングさせたりもしています。
2015年に「空き家等対策特別措置法」が施行されてからは、行政においても空き家問題に力を入れる姿勢が強くなってきています。私たちも行政との連携が増え、以前より空き家所有者が相談しやすい環境づくりができていると感じています。
空き家は倒壊や火災といった建物単体のリスクだけではなく、犯罪の温床として悪用されるなど、周辺地域にも悪影響を与えるリスクを抱えています。
そんな空き家を有効活用することで、これまで負の資産であったものを、その地域をより良くしていく拠点へと生まれ変わらせることができるのです。所有者の悩み解消のみならず、その街にもメリットを与えることができるのが、空き家活用の素晴らしいところです。所有者にも「街に貢献している」と感じてもらえると思います。